パワハラ防止法の中核となる、アウティング防止策ってなに?
パワハラ防止法の中核となる、「アウティング防止策」、あちこちで見かける表現ではありますが、いざ「アウティングって何?」と聞かれると、あまり意味が分かっていない方の方が多いのではないでしょうか。今回はパワハラ防止法の中核とされるアウティング防止策について解説します。
パワハラ防止法についての復習〜中小企業の施行迫る〜
パワハラ防止法は、正式には改正労働施策総合推進法といわれ、大企業は2020年6月1日に既に施工されています。一方で中小企業の施行は2021年6月にはまだなのですが、2022年4月には施行されることが決まっており、既に施行まで1年を切っており、カウントダウンに入っていると言えます。
かんたんに内容をまとめると、全ての企業にSOGIハラやアウティングの防止策を講じることが義務付けられており、これを守らなかった企業に関しては是正勧告や企業名の公表といった重い罰が課されます。
ちなみにパワハラの定義ですが、「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」という3つの条件を満たすものをパワハラにあたるとしています。
アウティングとは何か
では、先程の文章の中に出てきた「アウティング」というのは、どういうことを指すのでしょうか。最近は世の中的にもLGBTの人の立場や性指向が尊重される方向に来ています。そんな中で、「労働者の性的指向・性自認などを本人の了解を得ずに暴露すること」がアウティングに当たります。
どういうことをするとアウティングと認定されるか
先ほども書きましたが、「労働者の性的指向・性自認などを本人の了解を得ずに暴露すること」を行うと、アウティングであると認定されます。これはパワーハラスメントに当たると法律で明確に謳われています。
SOGIハラのSOGIとは
一方でSOGIハラというのは、略さずにいうとSOGIハラスメントのことを言い、「相手の性的指向や性自認に関する侮辱的な言動」という、アウティングよりも一歩踏み込んだ言動のことを指します。SOGIというのはSexual Orientation and Gender Identityの頭文字のことで、性的指向/性自認のことをいいます。LGBTがレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーという「誰」を指すのに対して、SOGIは「どんな性別を好きになるのか」、「自分自身をどういう性だと認識しているのか」という「状態」を指すので、私たち異性愛者であっても私たち全員が含まれます。そのため、「あんな男と付き合って信じられない」などといった言動も広義的にはSOGIハラに該当します。
アウティング行為やSOGIハラが行われた時、罰せられるのは誰か
ここまでで、アウティング行為やSOGIハラを行うことが「パワハラ」にあたり、防止されて然るべきものであるということは理解できたと思います。では、この行為が起こった時に、パワハラ防止法上において、罰せられるのは誰か、といいますと、これは「企業」に対して是正勧告や罰則が与えられます。決してアウティング行為やSOGIハラを行なった人のことをパワハラ防止法で罰することはできません。
パワハラを行なった人に対しての罰則を求めようと思ったら、企業の内部にあるパワハラ相談窓口であったり、企業内部の就業規則上の問題になってきますので、それは個々の企業で対応は違うと考えておいた方がいいでしょう。
アウティング・SOGIハラ防止策にはどのようなものがあるか
企業に対しては以下のことが義務付けられています。
- 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- 「1〜3」に併せて講ずべき措置
少し抽象的で分かりにくいかと思いますので、具体的に見ていきましょう。
まずはSOGIハラやアウティングが職場で起こらないようにするために社内規定で禁止事項としての盛り込みや懲戒規定を明文化することが求められています。
また、相談窓口を設けること、研修で社内に周知することが措置義務として求められます。そして、SOGIハラやアウティングが発生してしまった場合、その事実を相談窓口や申し出た人が解雇や異動などの報復行為を受けないようにした上で、アウティング防止策としてはこれ以上広まらないようにすることも義務として盛り込まれています。
いつまでも改善されない場合の訴え先について
会社に訴えてもいつまでも改善されない場合は、都道府県の労働局に訴え出るといいでしょう。是正勧告を行なったり、企業に対しての罰則を与えたりするのは各都道府県の労働局であるからです。
あまりにも改善されないと企業名は公表される
労働局に訴え、是正勧告が出されたにも関わらずなんら対策を企業側が行わない場合、最終的には「企業名の公表」が行われます。罰金などの実害が直接的にあるようには見えないかもしれませんが、「この企業ではパワハラが常態化している」という公表になりますので、その後の雇用に問題が生じたり、企業イメージが悪くなったりと言った社会的制裁が行われることになります。
まとめ
今回は、パワハラ防止法に関して、SOGIハラ、アウティング対策などについて解説させていただきました。パワハラのない環境で働くことができるというのは非常に生活レベルを向上させるものになるでしょう。パワハラでの自殺なども過去に起きてきたことも相まって、こういった法律の改正に至ったのですが、全ての対策を取れている企業がどこまであるかは未知数であると思います。パワハラを受けた場合は泣き寝入りせずに、声を上げていけば、自分が会社を動かすことすらできる世の中になったのです。この制度を利用しない手はないと思いますので、パワハラを受けた場合は相談窓口にしっかり相談して実績を作っていきましょう。